グローバル人材育成のために

日中韓子ども童話交流事業

日中韓子ども童話交流事業は、超党派の国会議員で構成される「子どもの未来を考える議員連盟」の発意により、21世紀を担う子どもたちの健全な育成を図ることを目的に創設された「子どもゆめ基金(2001(平成13)年4月設置)」の普及啓発活動の一環として、「日中韓国民交流年」にあたる2002(平成14)年度にスタートし、2010(平成22)年度までは日本で、2011(平成23)年度以降は3か国による巡回開催で行われています。

日本・中国・韓国の小学校4~6年生の児童を対象に、100名(開催国34名、非開催国33名)の子どもたちが一堂に会し、3か国混合で構成されたグループごとに1冊の絵本を共同で制作することを通して、読書の楽しみを知ってもらうとともに、各国の絵本・童話や参加者間の交流を通して相互の伝統や文化の特徴や共通性、違いを理解する契機とすることを趣旨としています。

関係機関

Interview

日中韓の子どもたちで、楽しい絵本づくりに挑戦。

増田 珠直(ますだ じゅな)さん
2010年の日本開催に参加。2018年はジュニアリーダーとしても参加 。現在は小学校の教師。

田中 心(たなか こころ)さん
2011年の中国開催に参加。2022年は参加経験者として参加。現在は家電メーカー勤務。
*本インタビューは2024年2月に実施しました。

■不安いっぱいのスタート

Q:お二人はこの事業にいつ参加されたのですか?その時の印象を教えてください。

増田さん 小学5年生の時に参加しました。もともと人見知りだったので、最初はひとりだけの世界にこもってしまって、全然しゃべれませんでした。でもジュニアリーダーという大学生のお姉さんや同じグループの女の子が、私が一番年下だったということもあり、かわいがってくれて、少しずつ打ち解けることができました。それで今度は、中国や韓国の子にも話しかけてみようという気持ちになったら、向こうからもすごく話しかけてくれて、少しずつ楽しく思えるようになりました。

田中さん 私は小学6年生で、中国でのはじめての開催の時に参加しました。出国前は日本人のジュニアリーダーがお世話をしてくれていたのですが、中国に移動したら、急に中国のお姉さんにお世話係が変わっていて、周りの子たちも中国人と韓国人ばかり。配ってもらった水のパッケージも中国語だし、どぎまぎしながら初日を過ごしたのを覚えています。
でも、開会式をした後のバスの中で、中国と韓国の子と、じゃんけんの出し方や言い方の違いを教えあってみんなで笑ったり、数の数え方の違いを教えあったりしたことで楽しくなり、次の日から仲よく過ごしました。

■絵本づくりを通して交流を深める「日韓子ども童話交流事業」

Q:みんなで絵本を一緒に作りましょうというンプルな事業だと思うのですが、どんなふうに絵本づくりを進めていったのでしょうか。

田中さん 大きな目的が、絵本を一緒に作るということがあるので、毎日絵本作成にまつわる活動をする時間が設けられていたと思います。最初のほうは、絵本作家さんにお話を聞いたりとか、現地に着いたら、日本と中国と韓国の絵本をもらって、それを読んだり。そのあと、ストーリーをみんなで考え実際に書き始めました。ストーリーづくりは、通訳にも入ってもらい、各国を象徴する動物を登場させ、みんなで「空はつながっているんだ」という話にしました。ストーリーは、空に亀裂が入ったのを、中国の象徴であるパンダと韓国を象徴するトラと日本を象徴するサルで力を合わせて直しに行こうということになり、最終的には直すことができ、みんな同じ空の下で幸せに暮らしました、という話だったと思います。
次に絵を書くのですが、私は苦手で、パンダを描いたのですが、何か違うと思っていると、中国の子が、「スモール、(耳を指して)スモール」と言って、耳を小さくしたらいいよとアドバイスしてくれました。ジェスチャーとか、ちょっとした英語で、言葉の壁を越え助け合うことができました。

■絵本づくり以外にもたくさんの思い出が

Q:絵本づくり以外で印象に残っていることはありますか?

増田さん 私の一番心に残っていることは、実は絵本づくりではないんです(笑)。ジュニアリーダーが夜、打ち合わせで出かける時に、寝たふりをして、いなくなった途端みんなで集まってゲームとかしたんです。言葉は通じないけど、ジェスチャーとか、知っている英単語を使って恋バナをしたり!それが一番楽しくて寝不足になるほどで(笑)、 今でも思い出に残っています。

田中さん 私も自由時間とかに結構いろんな思い出があります。みんなと一緒に絵を描いて遊んだのですが、1人すごい絵がうまい中国人の子がいて、私の似顔絵を描いてくれました。両親が感心するほどとても似ていて、今でも額縁に入れてリビングに飾っています。また、絵本を書く以外の時間では、中国の史跡を回ったり、文化に触れたり、レクリエーションがあって、みんなと仲を深める時間というのが設けられていたのをよく覚えています。

■時を経て二人とも、再びこの事業に参加

Q:増田さんは、2018年の日本開催時にジュニアリーダーで参加されましたね。

増田さん 大学生の時に案内をいただいて再び参加しました。小学校の先生になりたいと思っていたので、子どもたちと一緒に過ごすめったにないチャンスだと思いましたし、英語にも興味を持っていたので生の英語を活かせるかもしれない、私自身も成長できるのではと思い、参加を決めました。
また、もともと人見知りだった私が、この事業をきっかけに、人と話すことを楽しいと思えるようになり、普段の生活でも人と良く話すように変わりました。また、お互いの言語がわからない中、身ぶり手ぶりや、簡単な英語で通じあえたというのがすごく楽しく、相手も私自身を見てくれて理解しようとしてくれている感じがして、とてもいい経験でした。なので、今度は私が支える立場となり、子供たちに変わるきっかけを与えたいと思い参加しました。

Q:田中さんは、2022年に日本人が参加するオンライン開催に参加されましたね。

田中さん 2011年に参加した経験は、人生に影響を与えています。それがきっかけで異文化に興味を持ったり、外国語に興味を持ったりしたので、もし別の機会があればぜひ何らかの形で参加したいと思っていました。大学生になったらいろいろ参加できるみたいだったので期待していたのですが、コロナの影響で全部なくなってしまいました。
私が参加した時は、この事業に参加したOBがどうやって再会するかという仕組みを決めるというプログラムだったので、これから参加する子供たちのためにも一緒に考えたいと思って参加しました。

■子どもたちへのメッセージ

Q:いろいろと深くこの事業に関わってくださっているお二人から、これから参加されるであろう子どもたちへメッセージをお願いします。

増田さん 当時は、人としゃべるのは苦手と思っていましたが、やってみないとわからないし、やらないで後悔するよりやって後悔しなさいと母に言われて参加を決めました。実際、参加してみたら思った以上に楽しかったし、日中韓と言葉や文化が違っても、わかりあえるものだなと思いました。
ジュニアリーダーとして参加した時も、言葉がうまく伝わらなくて「ああ、こう伝えたいのに・・・」ともどかしく思ったりもしましたが、それが相手を知るチャンスでもありました。当時の子がどんどん大きくなって、私もジュニアリーダーをしたいと言ってくれたら嬉しいです。私は自分が変わるきっかけになったし、将来こうしたいと思うきっかけにもなったので、迷わっているのならまずはやってみて欲しいです。

田中さん 子どもの頃に経験したことは、その後の人生の基盤にもなっていきます。この事業では、国際的な取り組みを通し、異文化を知ったりすることで、間違いなく私の人生をとても豊かにしてくれました。ぜひ参加して、新しい自分を見つけたり、いろいろ興味を持つきっかけになったらいいなと思います。

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