グローバル人材育成のために

アセアン加盟国中学生招聘交流事業

アセアン加盟国の中学生が日本を訪れ、日本の自然や文化、同年代の中学生との寝食をともにした交流を通じて、両国の理解を深めてもらうことを趣旨とし、2011(平成23)年から実施しています。

関係機関

Interview

10年間で2回、中学生たちを日本に引率!

レ・ティ・ゴックさん
2012年と2023年、「アセアン加盟国中学生招聘交流事業」随行者として参加。
ハノイ国会大学日本言語文化学部、第二日本語部門長。
*本インタビューは 2024 年 2 月に実施しました。

■2012年に、1回目の引率
今はベトナムの首都、ハノイ市に住み、ベトナムの大学で日本語を教えています。日本語教師という仕事ですが、日本語の言語知識だけではなく、日本の文化、日本への愛情も学生に伝えたいと思ってやっています。
「アセアン加盟国中学生招聘交流事業」には、2012年と2023年の2回、引率者として参加しました。この事業に参加する前から、海外に対する関心はありました。小学生の頃から海外、特に日本に対する関心がありました。そのころ夕方に国営放送で日本のアニメシリーズが放映されていて、そのアニメに出てくる生活の様子が、ベトナムの生活とは異なっていて、その違いが気になっていたので、いつか日本に行って、自分の目でその違いを見たいなと思っていました。
2012年に初めて参加し、日本に行きました。私にとっても初めての海外でした。1週間ぐらい日本の(広島県にある)江田島という美しく豊かな自然に恵まれている穏やかなところで、現地の中学生と交流をして、楽しく過ごしました。
この事業を引率することになった理由は、文化や言語が異なる世界の中学生と、英語、日本語を共通言語として、ディスカッションや体験活動を中心に交流し、だんだん成長していく子どもたちの姿を見守りたいと思ったからです。
特に印象に残っていることは、中学校への訪問で、日本の中学生の学習の様子や、給食当番をしている様子を初めて見たことです。まだ中学生なのに、みんなちゃんとできていて素晴らしいなと感心しました。また、ベトナムチームから参加者した子が、日本にいる間に誕生日を迎えたのですが、国立青少年教育振興機構(以下、「機構」)のスタッフの皆さんが、わざわざケーキを用意して、小さなバースデーパーティーを開いてくださいました。ケーキのロウソクの火を吹き消すと、他の国の子どもたちが次々とプレゼントを手渡していました。異なる国の子どもたちがみんな一緒においしくケーキを食べて、夜遅くまではしゃいで、楽しく過ごしている様子を見て、私だけではなく機構のスタッフの皆さんも感激して涙ぐんでいた光景が忘れられません。

■日本での経験がもたらす成長
思春期の中学生6人の引率は、大変じゃないとは言えないですね(笑)。やはりみんなまだ子どもです。初めての海外、初めての日本という子もいますし。
室内での活動はいいのですが、屋外での活動になると、私の指示を聞かずに、気の向くままに行動してしまう子もいました。とても賑やかで人が大勢いる渋谷の街で、中学生6人を見守るのは、かなり大変でした。私だけではなく、おそらく機構のスタッフの皆さんも、大変だったと思います。子どもたち自身も大変だったろうと思いますが。しかし、大変だからこそ、自分が鍛えられるとも思っています。「大変」という漢字を見ると、「大きく変わる」と書きます。大きく変わらないと、成長できないですよね。だから、大変だからこそ、成長できるのではないでしょうか。私はいつもそう思っています。
プログラムが終わるころには、子どもたちの大きな成長や変化を感じました。みんなよい方向に変化したと思います。いつも朝寝坊で遅刻していた子が、周りの人に迷惑をかけないように、時間をきちんと守って、早く起きれるようになったり、ちょっと無口であまりしゃべらなかった子も、活発で主体的に行動できるようになったり。ずっと前から日本に憧れていた子も、そうではなかった子も、テレビや漫画、アニメなどで見ていた物事を、実際に自分の目で見て、自分の耳で聞いて、日本で日本の文化を体験できたことの影響は大きく、「先生、将来日本へ留学する」とか「日本に住みたいな」と言い出す子も出てきました。日本での体験が、とてもいいものだったことの現れだと感じています。

■2023年に、2回目の引率
2回目の引率をすることになった理由は、子どもも好きだし、もちろん日本のことも好きだからです。また、10年前の中学生と今の中学生、10年前の私と今の私の共通することや相違点があるかどうかということにも興味があって、再び引率をすることにしました。
1回目と2回目では、プログラムの違いがあって、1回目はまず江田島で、日本の中学校訪問、博物館訪問、屋外活動、ホームステイなどの活動を行ったあとに、東京に戻って日本人の中学生と交流をしました。2回目は、全ての活動が東京で行われました。(4年ぶりにプログラムが再開したということもあり)ホームステイがなかったことは、ちょっと残念だなと思いました。
この10年で感じる子どもたちの変化ですが、今の子どもたちはグループワークが得意で、新しい環境に慣れるのが早いなと感じています。インターネットやスマートフォンなど、情報通信技術の発展で、世界が毎日変わっていく時代に生まれて育った子どもたちなのです。今回のプログラムで最も印象に残っているのは、最終日に子どもたちがグループになって、異文化を理解するための動画制作をするという課題に取り組みました。ディスカッションをして、計画を作成し役割分担までも全てきちんとして行い、インターネット、スマートフォン、タブレットなどを駆使し、わずか数時間で素晴らしい動画を完成させました。立派な上映会も行い、その出来の良さに感心しました。グループワークを通して学んだこともたくさんありますし、異国の子どもたちとも、より早く仲良くなれました。5日間に多彩なプログラムがぎゅっと詰め込まれていて、時間が足りなくて、もう少し余裕があったらなと思ってしまいました。

5日間にわたってベトナム人の中学生だけではなく、アセアン各国の中学生の頑張っている姿を見ました。毎日頑張って、少しずつ成長していく中学生を見ていると、私も負けたくない!という気持ちでいっぱいになりました。自分自身を変えるのに、いつからだって遅いということはない。本事業に参加した中学生が私に教えてくれたことです。自分自身も負けずに頑張ろうと決心しました。

■今後、参加する子どもたちへ
異なる国や文化、異なる言語や考え方でも、理解の壁にはなりません。精一杯努力して、素直に振る舞ったら、きっと分かり合えるでしょう。全ての努力が報われるからです。皆さん、存分に楽しんでください。

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